精神科の診療をしていますと、初めて受診された時に、すでに「就労不能」の状態になっている患者さんをみることがあります。
先日も同日に会社勤めをしている患者さん2名が、初診時に「就労不能」の状態で当院を受診されました。
こうした場合、あまり時間の猶予はありません。すみやかに、「病気休職が必要である」旨の診断書を作成発行せねばなりません。
クリニックで診察医は、診察を行い、診断をつけていく訳ですが。
とにかく、患者さんは、明日の仕事に出勤する気力や体力が無い状態になっているのです。
こうなると、仮に治療が奏功して健康状態が回復するにも一定の期間が必要なので。
明日の仕事をどうするか・・・、という話になってしまうのです。
たいていの場合、患者さんご自身がクリニックを受診した時点で、病気休職するしかないと半ば観念して来院されているようです。
診察医としては、メンタル不調の兆しを感じはじめた早い時点で受診されていれば、と残念でなりません。
我慢に我慢を重ねた結果。もはや、「就労不能」のノックアウト寸前でクリニック受診をされるのですから。
まだ、症状も軽い状態でクリニックを受診して、ご相談いただいていたら、「就労不能」の診断書を書かなくて済んだかもしれないのです。
少なくとも、早い治療介入もできていたでしょうし。
メンタル不調に至った原因をお聞きするなかで、原因を少しでも取り除く取り組みもできたかもしれないのです。
私は、診察や治療を行う臨床医を行いながら、企業や自治体の産業医も行っています。
つまり、会社や役所の中でメンタル不調の社員職員の診察や面談を行っているのです。
そのために、職場の中で、過重労働、長時間労働、高ストレス労働、仕事の重責、心理的圧力、がどういったものであるのか少しは知っているつもりです。
メンタル不調をさらに悪化させないために、職場の産業医や管理者あてに診断書や意見書を書くこともできます。
「就労不能」になる前に、こうした職場あてに診断書や意見書を作成発行して、不調の原因を少しでも軽減する取り組みが大事なのだと思います。
産業医の経験をもとに、メンタル不調者の症状を悪化させないために、職場に対してどういう介入が有効かを考えて対応することができます。
「仕事のことだから相談してもどうにもならない。」
「職場のことだから相談してもどうにもならない。」
「職場のことだから相談してもどうにもならない。」
そう決め込んでしまわずに、是非、メンタル不調の兆しを感じた早い時点で、クリニックを受診し健康や症状のご相談をしていただきたいと思います。その際には、遠慮なく、仕事のこと、職場のことも、お話して下さい。少しでもお勤めされている方のメンタルヘルスのお役に立ちたいと考えております。