春日井駅前メンタルクリニック

愛知県春日井市のクリニック(心療内科・精神科)


愛知県春日井市のクリニック(心療内科・精神科)
JR春日井駅の北口駅前1分 ミニミニ店舗上
〒486-0825 愛知県春日井市中央通1丁目88駅前第3共同ビル2階
電話0568-85-3705
春日井駅前メンタルクリニック公式ホームページ
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コロナウイルス感染症によって2020年から外出自粛、会食自粛、旅行自粛など、様々な生活上の制約を受けています。
職場ではリモートワークが推奨され。家庭生活でも外食や人と会う機会が随分減ってしまいました。
そんななか一部報道でコロナ禍によるうつ病罹患者数が増加しているとの指摘されています。

クリニック診療をしていても、それを感じることがあります。
不安、気分の落ち込み、など様々な訴えの背景に、コロナ禍による生活様式の変更を強いられていることも一因になっているようです。
原因はなんにせよメンタル不調の兆しを感じれば早めのクリニック受診をおすすめします。

先日、「喜び・興味関心の喪失」を書きました。
http://kasugaiekimae.blog.jp/archives/9160123.html

忙しい日常の中で、趣味や余暇の過ごし方について振り返りました。
何か趣味や好きなことあるかな。してるかな、と。

実際のところ、忙しかったり、コロナ禍で外出控えたり。
できること限られてはいますね。

でも、好きなことは幾つか確認できました。youtubeで動画を見ることがたまにあります。
ここ1年くらいbeatboxの動画をよく見ています。見ているだけでも楽しいです。



ストリートピアノの動画も好き。ござサンのストリートピアノも最高。

うつ病の症状のひとつに、「喜び・興味関心の喪失」という症状があります。

もともと病気になる前に好きだったこと。
例えば、テニスが好きだったとか。
海釣りが好きだったとか。
ラーメンの食べ歩きが好きだったとか。
仲間とわいわい飲み会をするのが好きだったとか。
TVゲームで通信対戦するのが好きだったとか。

そういった、趣味や、楽しみなど。
主に余暇の時間を楽しく過ごすことが、うつ病になってしまうとできなくなってしまうことがあります。

仕事が忙しくて休日出勤。
時間がないから、旅行ができない。
これだけなら、まだいいのですが。
いざ、休暇がとれても、そういった好きなことをやる気がしない。
知人に誘われて旅行にでかけても、ホテルの部屋で臥せって休憩したまま、温泉にすら入る気がしない。
せっかくの料理もおいしく食べることができない。

こういう状態になったら、「喜び・興味関心の喪失」が生じているのかもしれません。

焼きたてのカレーパンを買って、公園でコーヒー飲みながら食べて。それで美味しく、幸せを感じる僕は。カレーパンで「喜び・興味関心の喪失」のチェックができそうです。
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心療内科・精神科の診療では、薬をつかった治療を行います。他に、言葉を交わして治療を行う精神療法を行います。

うつ病を例に挙げてみます。
うつ病は、気分の落ち込み、不眠、不安、食欲不振、意欲の低下、思考力の低下、などがみられるメンタル不調です。
仕事の過労などでも、うつ病になることがあるので、わりと身近な精神疾患のひとつかもしれません。


うつ病と診断したときに、診察医は、治療の方針を組み立てていきます。
・ 薬物治療(くすりを使った治療)
・ 精神療法(不調になった原因の検索や、回復するための助言や支援、再発予防のための注意点の確認、など。)
・ 環境調整(仕事を一時お休みして、療養に専念するなど。健康回復するための環境の改善を行う。)

不眠症でも。他のメンタル不調でも、上記と同様の治療の方針を組み立てていくことになります。
現代のメンタル不調の診療で、主役となるのが薬物治療だと思います。
抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、気分安定薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、認知症治療薬、などです。

しかし、診察をしていますと、「薬を使わず治したい」と希望されている方もおられます。
「クスリに頼りたくない。」
「クスリに依存するようになりたくない。」
「依存性のあるクスリは使いたくない。」
「副作用の可能性があるならクスリは使いたくない。」
・・・ 発する言葉は人それぞれですが。できるだけクスリは飲みたくはない、という人は少なくありません。

もちろん、治療の方針や選択肢をお示ししたうえで、どうしても薬物治療は避けたいとのことであれば、無理強いはできません。
極力ご本人の希望を踏まえた治療を行うことになります。

ただ。やはり、体調をこわして受診された方に、できるだけ早く回復して、症状を緩和するためには薬物治療は有力な選択肢なのです。
まずは、薬物治療を行い、しっかりと症状の緩和や、症状のコントロールをつけることを考えるべきだと思います。
そして、一定の症状の緩和がはかれた上で、落ち着いて精神療法をすすめていくことになるのだと思います。

先述のうつ病の診療においても。まずは、抗うつ薬をしっかり使った上で、気分の落ち込みの症状を緩和。
思考力が低下した状態を、改善させていく。
そうして、ある程度症状が落ち着いたところで、患者さんと診察医とが言葉をかわしながらこころのケアをしていくという段階にすすみます。

ずっと、クスリ一辺倒という治療は良くない、というのは賛成です。
また、クスリ漬けのような治療も良くない、というのも全く賛成です。

でも、クスリを使った治療の良い部分を全く享受することなく、治療をすすめていくことも、賛成しかねます。
クスリを使えば受けられた症状緩和ができるのに、そうした利点をみすみす逃したまま、症状の苦痛を味わい続けることに意味はあるのでしょうか。
必要最小限の薬物治療は行ったほうがより良い結果をもたらすと思うのです。
「必要最小限」というところが、大事なところなのかもしれません。
そのところを、患者さんと診察医との相談のなかで合意点を見つけ出すことが大事なのだろうと思います。

クリニックの求人情報 2024.09.12最終更新
現在、以下の職種スタッフを求人募集しております。

(1) 医療事務スタッフ
パート事務員を募集しております。
未経験者でも分かりやすくお仕事をお教えしてお勤めいただけるよう配慮いたします。お気軽にお問い合わせ下さい。

医療事務のお仕事が未経験でもご心配なく。丁寧にお仕事のやりかたをお教えいたします。
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是非、ご一緒にお仕事しましょう。


なお、勤務シフトはご都合をうかがい一定の配慮をいたします。
クリニックとしては、できるだけたくさんシフトに入り経験と習熟を積んでいただける方をお待ちしております。


お問い合わせは以下のメールアドレスへ。お気軽にお問い合わせ下さい。
meruado

初診の患者さんを診療していますと。
不眠や気分の落ち込みでかなりお困りの状態になっている方が大変多くいらっしゃいます。
もう少し早く受診していただき、治療開始できていたらと思います。
つらいのをガマンしていたのでしょう。
ガマンの限界に近づいたのを悟り受診を決意されたのだろうと思います。

もう少し心療内科・精神科のクリニックを抵抗感なく受診できていたら。
つらい思いをしなくて済んだのではないかと思うのです。
メンタル不調の兆しを感じたら、早めに受診をしてご相談いただければと思う次第です。

今日、「予備能」という言葉を使って話をしました。

「肝予備能」「脳予備能」などという言葉をgoogleで検索すると幾つか記事がでてきます。
「○○予備能」という臓器名の後に続けて予備能という言葉を使うことが多いようです。

実は、20年以上前に、自分が会社員時代に特許の明細書の中に似たような概念の言葉がありました。
それが、fault tolerantという言葉でした。
機械やシステムの中で故障が発生したときに、その故障のために機械やシステムの処理機能が全て喪失されると困ります。
そのため、一部の故障が発生しても、処理作業を故障した部位以外で代替しようという仕組みのことを言います。

例えば、スマホが故障してしまった。そのままでは友人とスマホで通信ができない。
しかし、自宅に固定電話があれば、その固定電話で友人と通話することができる。
このような、スマホと固定電話という二重回線を保有しておけば、一方が故障しても、他方で、通信を行うことができるという仕組みです。

人間の身体の中にもこういう故障や不調を代償する仕組みが備わっています。
そうした生体のfault tolerant systemが、「予備能」と呼ばれるものです。


例えば上の文献を読みますと、「認知予備能」という概念が説明されています。
アルツハイマー病や外傷性脳損傷などで脳の働きに悪い影響を受けたとしても、
認知予備脳があると、認知機能を保持するために有効に働くということが記されています。

普段から、健康に気をつけて、健康状態にゆとりをもっておければ、
何かしらのストレスがかったときや、何かしらの身体の問題が起こったときでも、
すぐに身体の機能が損なわれてしまうのではなく、他の代償手段をつかって機能低減を防ぐことができるのです。

例えば、低体重。低体重が進めば、低栄養状態になります。
身体の中にエネルギーの貯蔵量が少ない状態です。
低栄養状態で、高いエネルギー需要がかかるような身体の変化が生じれば、とたんに脳や肝臓などの臓器に不調をきたすことでしょう。
または、食事がうまくとれない事態が発生すれば、もともとエネルギー貯蔵が少ない上に、
さらに機能を保つための最低限度のエネルギー需要に耐えることができなくなってしまうことでしょう。

人体には、もともと一定のfault tolerant systemが備わっているとはいえ、
十分なゆとりを保って置かなければ、何か問題が発生してしまったときに、代替機能を発動して処理能力を保つことができなくなる。
予備能を意識して普段から健康管理をするべきなのかもしれません。


2021年2月、北海道旭川市で氷点下17度の寒さの中、中学2年生女児が自宅を飛び出し行方不明となり。その後、3月23日に雪の積もった公園で凍死した状態で発見されたという事件。

週刊文集で報じられたように、この事件は、凍死遺体が発見されるまでの間に、いじめ、暴行など、非常に目に余る非道行為が行われたようだ。自殺というよりも、そのいじめ暴行の犠牲になったようだ。明らかにされていないが、他殺だったのかという疑惑さえある。

〇星中学校の同級生を含むいじめグループから川へ飛び込むよう強要され、死ぬかもしれない川への飛び込みを無理強いされ。
性的ないやがらせを強要され、その様子を動画に撮影するよう強要。
その性的な動画を勝手に他者へ送り共有させて、人権や自尊心を傷つけ。
指示を言う通りに実行しないと、避妊なしにレイプするぞと脅迫。

このような刑法に触れるような犯罪行為を繰り返し行い、自殺強要が疑われるような凄惨な暴行にまでおよんだ。もはや「いじめ」の域は明らかに超えており犯罪というのは明らか。
担当した警察もどうも無能だったようで、加害者への取り調べや、調査が不十分で、いじめ、暴行をとめることができなかったようだ。
学校もやはり節穴で怠慢な教員どもしかいなかったようで、いじめの認識や、いじめを止める指導はしなかったようだ。無論、節穴なので暴行にも見てみないふりで認知しようとしなかった。
警察も教員もこのような無能・無作為ぶりで給与だけはせしめて居たのだから、その厚かましさには大いに恐れ入る。

さて、被害者の中学少女は、このような暴行(もはや、いじめの域は超えている)によって、メンタル不調をきたしてしまったようだ。

この事件は、果たして自殺なのか。または他殺なのか。その辺もまだはっきりしていない。
既に分かっているとおり、警察、教員などが無能ばかりだったものだから、調査すらこれかしますと述べる怠慢さ加減。
自分の無能さ、不作為を、隠したいということで頭がいっぱいなのかもしれない。
知れば知るほど、あきれるばかりである。

残念だが。「いじめ」に対して、警察も教員も、ほとんど役に立たない。それが暴行、強要、恐喝など犯罪にいたっても、見てみないフリだ。
そればかりか給料もらっているにも関わらず最低限度の職業人としての職責も果たさない。
いじめ加害者からすれば、「黙認されている」と勘違いして、エスカレートしたのかもしれない。
周囲の馬鹿な大人どもの犠牲になったと言わざるをえない。

このようないじめや暴行を受ければ、ひとは正常な精神状態ではいられなくなる。
当然、メンタル不調にもなるだろう。
上記事件報道では、PTSDを患ったとさえ記述されている。

精神科医は、犯罪を調査したり、犯罪者を処罰することは、本来業務ではないので実施出来ない。
しかし、いじめの相談をしてくれれば、その子を守ろうと何かしら一緒に考えることはできるかもしれない。
保護者、学校、警察、児童相談所、教育委員会、役所・・・。関係各所に働きかけることくらいはできる。とにかく、いじめ被害を受けているひとを、そのまま放っておいて良いという道理はない。

大人が自分の最低限度の職責を果たそうともせず、給与だけをのうのうと収受し続けるようなおかしな状態は到底許容できない。
大人のひとりとして、相談を受ければ、自分の職責を果たし、困っている人を救おうと一緒に考え行動するべきではないか。自分に何がどこまでできるのか分からないが。
診断書や意見書、そういった書面を書いて関係各所に働きかけることで、状況を改善できはしないかと。
もし自分のクリニックに、旭川で犠牲になった中学生の少女がきてくれていたら、救うことはできただろうかと。
そういうことを考えてしまう。

産業医の仕事をしていて、パワハラ被害のためにメンタル不調をきたし、病気休職したという話を聞きます。
病気休職から復職する際に、復職の可否判断のための面談を行うのですが。
よくあるのは、その面談の場で、上司からのパワハラを受けていてメンタル不調になったという話です。

しかし、困ってしまうのが、産業医にしても、保健師にしても、パワハラの調査をすることができません。
加害者側の聴取、被害者側の聴取、その場を目撃したひとの話、などを広く聴取してパワハラと称すべき不適切行為があったのか否かを調査しなければなりません。
産業医にはその調査権限もなく、調査能力もなく、判定権限もありません。
そのため、パワハラ被害をうけたという人の話を傾聴したとしても、果たしてパワハラがあったのかなかったのかの深層は分からないのです。

これでは被害者側の一方的な見解や認識だけを聞いたかなり偏ったものの見方になってしまいます。

そのため、被害者側からパワハラ被害の申し出を発してもらい、人事や労務などの調査能力や判断能力のある機関に、
パワハラ調査をしてもらうことが大事になってきます。
パワハラ調査は、たいていの大手企業や役所などでは調査能力があるのですが。
パワハラ被害を受けた人が被害の申し出を届け出ないと、調査が始まらないという仕組みになっています。

産業医としては、このパワハラ調査とその結果を総括した判断をもって、パワハラがあったのか否かを認識します。
言い方をかえれば、被害の申し出や、調査、判断がなければ、パワハラはなかったものとして扱わざるを得ない場合があります。

「わたしはパワハラにあった。それで、うつ病になった。上司のせいで病気になり休職までさせられた。」
「上司や職場のせいで、具合が悪くなったのだから、復職するときには職場を変えてもらいたい。」
「復職するときには、仕事を変えてもらいたい。」
このような申し出を産業医面談の場で、願いでる人がいます。

職場に落ち度がない場合には、本来は、休職前の元の職場にもどるのがあるべき姿です。
職場に落ち度がある場合には、再発予防の観点から、休職前の元の仕事から離れ、他の職場や他の業務にかわっていただく配慮が必要となることがあります。

そのため、パワハラ被害を訴えるひとには、被害届け出と、調査・判断を経て、そのパワハラの有無の認定を受けてもらいたいとお伝えしています。

実際にパワハラがあったと職場で認定されれば、その場合には、職場や仕事内容を変更すべきケースもあると思います。

メンタル不調の臨床においても、企業内での産業医面談においても、パワハラやセクハラの被害によって不調をきたしたという訴えは少なくありません。
しかし、その被害の有無を認定するのは、人事や労務の仕事です。
産業医や医師は、その認定結果を踏まえて、就労上の助言をすることはありますが。
被害者側の一方的な訴えだけで、職場への介入や就労上の指図をするべきではないと考えます。

こうした、健康管理の話と、職場の労務環境の話と、が複雑にからみあうことがみられます。
それらをうまく、解きほぐし、問題の所在を明らかにしてからでないと、対処を誤ることがあると思います。

クリニックでの診察においては、患者さんの健康状態が主たる関心事です。
パワハラがあったか、なかったかは、背景の情報として参考にとどめるべきなのかもしれません。
あくまで健康回復のための診断と治療とに主眼をおいた対応に徹するべきと思い対応させてもらっています。

クリニックでの診療のほかに、
産業医、特にメンタル領域を専門とする精神科産業医の仕事をしています。
かれこれ10年以上、企業や自治体におけるメンタル不調者の面接をしてきました。
今回はこの精神科産業医の仕事についてお話したいと思います。

企業や自治体の職場のなかで産業医の仕事をしているのですが。主に下記のような業務を行っています。

(1) メンタル不調のため病気休職していた職員が、治療を経て、職場へ復職しても良いか否かを判定。
(2) 病気休職から復職を果たした職員の、復職後の健康状態を管理。
(3) 就労中の職員のメンタル面の健康相談。
(4) 職場の管理職からの相談。部下の健康状態に不安を感じるためどう対処するべきかの相談。
(5) 長時間労働にかかる職員の面談。
(6) ストレスチェックで有所見と判定された職員の健康相談の面談。

産業医として働く人々の面談をするとき、どうしてメンタル不調になったかの原因検索を行います。
対人関係、長時間労働、などと並んで多いのが、「仕事がうまく処理できない」という悩みです。

業務の内容が難しくて、うまく自分では業務を処理していけない、という悩みもあります。
業務の量が多くて、うまく自分では業務を処理していけない、という悩みもあります。
仕事を遂行するにあたり、社内や社外のいろんな人々と折衝や調整をしないといけないが、そうした調整がうまくできないという悩みもあります。

以前は仕事は順調にできていたのだが、異動をしてから、業務をうまく処理できないとか。
昇進をしたのだが、役職が上がってからその職務をうまく果たすことができないとか。
これまで順調だったのだが、加齢や疾病により職務遂行能力にかげりがでて以前のように職務遂行ができないとか。
不調にいたった背景にも、さまざまなバリエーションがみられます。

問題は、その不調にいたった原因が治療によって取り除けるような種類のものなのか。
それとも、治療によっても、およそ取り除くことはできないような種類のものなのか。
それをうまく判別していかなければなりません。

そもそも、職場が、その人の職務能力を大きく超えた業務課題を与えたのだとしたら。
おそらく、仕事をうまくこなせていけないために、大きな心理的ストレスを背負うことになることでしょう。
自分ができない仕事を請け負ってしまえば、業務が停滞し、納期に間に合わないなど支障が生じるでしょうから。
こういった支障を多数背負いこむことでメンタル不調になってしまう事例がときどき見られるのです。

しかし、一口にメンタル不調といっても、業務能力を超えた職責を背負わされた人を医療で助けることには限界があると思っています。
ひとまずは、環境調整をはかり、業務負荷を下げたうえで、精神科領域の治療をうけていただきます。
場合によっては、病気休職の手続きをしたうえで、自宅療養や入院治療をしていただくこともあるでしょう。

しかし、仮に快癒したとしても、元の職場に戻り、元の職責を背負うことができるのかは慎重に検討せねばなりません。
そもそも職務能力が不足しているために仕事がうまくできずに生じた心理的ストレスですので、それが再発することが容易に想像できるからです。
再発予防という観点から、どのような職場で、どのような業務内容で、どのような役職で職場に復職いただくのが適切であるかは、十分に検討してから復職していただくべきだと考えています。

簡単に言えば、より難易度の低い仕事、より負荷の低い仕事、に変更して職場復帰をできれば再発の可能性は低減できるでしょう。

そもそも。その人の能力に見合った業務を与えられていたら、メンタル不調にはなっていなかった可能性があります。
そういう意味では、人事権者がその人の能力や適性を見誤って、仕事のポストにつかせていたとも言えます。
こういうケースは、人事労務管理の失敗ともいえます。
人事労務管理の失敗により発生したメンタル不調者の健康管理を、産業医として関わっているということです。

ケースによっては、上司や人事労務の担当者に対して、復職後の業務内容やポストについて産業医として意見を具申することもあります。
仕事をするうえで、頑張ることも大事ですが、頑張りで対応できることにも限度があります。
その限度を超えたときメンタル不調という健康問題に発展するのだと考えます。

困ったことに。仕事量を減らす、難易度の低い仕事に変える、役職を下げる、などの対応が、人事制度としてできない職場も存在しています。
「大相撲における横綱」がいい例です。横綱は相撲の上手なひとが就く役職ですが。相撲の実力が下がった時に、大関や他の役職に下げるようなことはできないそうです。横綱は、横綱であり続けるか、引退するか、の2つの選択肢しかありません。
企業や自治体でも、職級を下げるという措置ができれば、業務量や難易度を下げた上で就労継続することができるのですが。それができない職場も存在しています。

働く人のメンタル不調の対応においては。精神科領域の治療という医学の問題と。その人にふさわしい業務内容や業務量という人事労務の問題との、両方が存在しているように感じています。この辺のことについては、また後日具体事例などを示してお話できればと思っています。

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