映画『ビューティフル・マインド』(A Beautiful Mind)を久しぶりに観ました。
ゲーム理論の先駆者である数学者ジョン・ナッシュ博士の半生をテーマにした映画。
数学専攻の大学院生の頃から、統合失調症に罹患しており、幻覚症状に影響されてきた姿が描かれている。
数学者の物語であり。それと同時に、統合失調症の症状に苦しんだ患者の物語。

1997年頃、まだ物理学専攻の大学院生だった頃に、ゲーム理論に興味を持って、
経済学研究科でゲーム理論の研究をしている大学院生のコロキウムに出席させてもらったことがあった。数学をかじっていたこともあったので、経済学の院生の集まりだしなんとかなるかと思って参加したが、あまり見聞きしたことのない用語が頻繁にでてきて難解さだけが印象に残った記憶がある。

ナッシュ先生が大学院のとき、寮のルームメイトと思っていた人物が、実は実在せず。
ナッシュ先生の幻覚だったというのが、衝撃的な印象を受けた。
長い間、架空の人物との間に一定の人間関係や会話などの記憶が積み重ねられているのが、不思議であり、大変なことだ、と思った。

しかし、実際に統合失調症の患者さんの急性期に診察をすると、幻聴や幻視が、ご本人にとっては現実と区別することができないことを理解した。
治療によって、幻覚があっても、それをあえて無視することで、一見すると健常者となんら変わらぬ生活ができてくる。
映画のなかでは電気けいれん療法のシーンもあり、ナッシュ先生が随分とこの病気に苦しめられたことがうかがえる。

いまではジョン・ナッシュ先生といえば、ゲーム理論の始祖のような数理経済学の巨人として知られる。映画のなかで、寮の自室の窓や、図書館のガラス窓に、数式を書き記しながら思考にふけるシーンが印象に残った。いい映画だと再認識した。

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